ナチュラルフロー代表

矢沢大輔

先日、近所の小川珈琲にモーニングを食べに行った時のこと。

テーブルの上に設置されたアクリル板に、自分の顔が映り込んでいるのを見て、中国の曹洞宗の開祖、洞山禅師が悟られた時のことを思い出しました。

 

洞山禅師は川を渡っている最中、水面に自分の姿が映っているのを見て悟られたのですが、私がこのことを知ったのは、今から十年ほど前。 

 

ヨーロッパの哲学者が来日し、目の前の鏡に自分の顔が映る様子を見ながら(洞山禅師が悟られた時と同じ状況を再現しながら)、手前側に「頭のない自分(空)」がいることを指摘して、誰でも洞山禅師と同じように「空」の自己を悟れるというワークショップが行われた時のことでした。

 

このワークを私も体験して、「私もとうとう悟ったぞ」という勘違い(妄想)が起きたのですが、理性というものは、この体験が思考によるつくり事であることをよく知っていて、真相を探し求める心の動きは止まりませんでした。

 

その後、「鏡に顔が映っていると見えているうちは、こちらに自分がいる証拠」という日本の禅師の言葉に触れ、哲学者が実験したように、思考を用いて「悟りとは何か?」「空とは何か?」をわかろうとすると、必ず「こちら」と「あちら」が分かれてしまい、こちらもあちらもない一如の活動の様子が見えなくなることを自覚できるようになりました。

 

また、二元性の思考を持ち込まない禅を実践したことで、ドラッグの依存症から抜け出せたアメリカ人が、自らの体験を活かし、さまざまな依存症や心配性、不眠症に苦しんでいる方々にカウンセリングを行っていることを知りました。

 

彼のカウンセリングは、お釈迦さまが説かれた「苦しみを滅する実践法」に則ったもので、思考の及ばない身体機能(働き)に直接触れられるようにクライアントを導き、成果を上げていたので、私もクライアントの皆様にその手順をご紹介してきました。

 

また、2021年に東京から京都に仕事場を移してからは、講話会などで、次のような相対的な考えに基づく因果関係の落とし穴について、お伝えしています。

 

・苦しみがなくなれば楽になれる

・罪悪感が消えれば心が晴れ晴れする

・怒りを抑え込めれば穏やかになれる

・エゴや煩悩をなくせば悟れる

・心のブロックを外せば自由になれる

 

これらの因果関係は、一見もっともらしく思えますが、どれも相対的な考えに基づくつくり事なので――好ましくない一面を取り除き、好ましいもう一面だけを残せば、完璧になるはず――この考えに従って、どれだけ頑張っても、次から次に問題が生じつづけます。

 

その理由は、考えによるつくり事の因果関係と、お釈迦さまが説かれた因果の法則(絶対性)とはまったく異なっているからです。

 

ちなみに、事実でないもの(考えによるつくり事)を事実だと思い込み、物事の道理がわからなくなっている状態を、仏教では「無明」と呼んでいます。

 

しかし、たとえ今、皆様がどのような悩み、苦しの中におられても、考え方でなく、「身体の機能の働き」に目を向けると、「環境(宇宙)」と一如になって活動している因果(必然)の様子がわかり、あらゆる問題が既に解決済みで、救われの身であったことを自覚できるようになります。

 

「衆生本来仏なり」とはこれかと、誰もがうなずけるようになります。

 

【前職】

日本デザインセンター(ブランド戦略研究所)

コピーライター

 

【非二元や哲学を学んでいた頃の写真】

「ホームには誰もいない」のヤン・ケルシュショット
「ホームには誰もいない」のヤン・ケルシュショットさん
「なぜ世界は存在しないのか」のマルクス・ガブリエル
「なぜ世界は存在しないのか」のマルクス・ガブリエル教授

 

【研修講師時代の実績】

 世界最大の一般消費財メーカーP&Gから依頼を受け、SK-Ⅱのスタッフ向け研修プログラムを開発、指導。

 

【資格】
CTI認定プロフェッショナルコーアクティブコーチ

米国NLP協会認定トレーナーアソシエイト

日本ソムリエ協会認定ソムリエ